煮干のカルシウム、ホウレンソウの鉄は脳内の情報伝達を活発にする

8月 12th, 2009

にぼしカルシウムというと「骨」を連想しがちですが、実は脳にも欠かせ凄い栄養素です。
カルシウムは人間の体内にもつとも多く存在するミネラルで、その99パーセントは骨や歯にあります。しかし、脳の神経細胞にも0.1パーセントと、ごく微量のカルシウムが存在し、脳内の情報伝達活動に大きな働きを果たしています。この微量なのに不可欠な脳のカルシウムが不足すると、脳はまず血液中から、次に骨や歯から、何とかカルシウムを調達して、情報伝達をスムーズに行おうとします。ところが、子どもの骨も歯も成長中ですから、自分のことで手一杯なのです。

そもそも幼児で1日500ミリグラム、学童では600~700ミリグラムと、子どもは大人以上にカルシウムを必要としています。この時期のカルシウム不足は脳にもカラダlこも深刻なので、煮干や干しエビ、イワシの丸干しや牛乳といった食品で、カルシウムを 日常的に摂るようにしましょう。

また、血液中の鉄分が不足する、いわゆる貧血も、脳に供給される酸素の不足を引き起こします。脳はブドウ糖をエネルギーに変える際、酸素を使いますが、この酸素の運搬役をつとめるのが血液中の「ヘモグロビン」です。その成分となる鉄分が不足すると、ひいてはブドウ糖もエネルギーに変われないことになります。

つまりせっかく朝ごほんを食べてブドウ糖を摂っても、脳のパワーにならないために、脳はまたもやガス欠状態に陥ってしまうのです。

とくに胎児期を含めた脳の発達初期の鉄不足は、どんなにあとから鉄を補給したところで改善されず、深刻な脳の発育不良を引き起こすといわれます。とりわけドーパミン系、セロトニン系、ノルアドレナリン系の神経伝達機能が低下することがわかっています。

たとえば、母親の胎内に鉄分が欠乏した状態で育った子どもの5歳時点での「脳力」を調べると、「言語能力」「運動能力」「従順さ」において、鉄分を十分摂った母親から生まれた子どもより劣るとした調査があります。また、新生児期に鉄不足状態にあった子どものその後を追った調査でも、貧血経験児童はすべての成績で劣り、情緒不安まで抱えていることがわかりました。かといって、赤ちゃんに鉄剤を与えることもできないので、妊娠中・授乳中のお母さんは、鉄分をなるべく摂るよう心がけましょう。

鉄分には、レバーなど肉類に含まれる「ヘム鉄」と、ホウレンソウなど野菜に含まれる「ノンヘム鉄」があります。このノンヘム鉄はポリフェノールによって吸収が抑制され、逆にビタミンCによって促進されるという特徴があります。またポリフェノールはドーパミン受容体の働きに関わる「亜鉛」の吸収も抑えてしまうので、食事の際の飲み物はポリフェノールを多く含むお茶より、水やビタミンCの多いジュースがおすすめです。

苦手なホウレンソウを頑張って食べても、お茶を飲んでしまったら水の泡で、鉄分も、亜鉛も、その摂り方が肝心なのです。

水分補給にはお茶より水やジュースを

4月 3rd, 2009

 ポリフェノールを多く含む「豆類・ナッツ類・ゴマ類」、カフェインの多い 「コーヒー」はもちろん、かの有名なカテキンを含む「緑茶」や「紅茶」「ウーロン茶」といったお茶類、そして「ココア」 や「チョコレート」も、摂りすぎには慎重になるべきです。

 子どもには十分な水分補給が欠かせませんが、お茶よりは水やビタミン類の多いジュースを与え、寒い日にはココアよりホットミルク。おやつはタンパク質を含むクッキーやプリンで糖分の効果的な補給を図り、チョコレートを食べたかったらチョコはチョコッと。

 緑茶の緑、赤ワインの紫など、ポリフェノールは植物の色素に含まれることが多く、チョコレートの茶色はエビカテキンです。チョコレートの原料・カカオには「エビカテキン」という抗酸化物質が含まれ、その量は緑茶の四倍もあります。子どもが食べるならエビカテキンを含まないホワイトチョコレートのほうがまだよいといえます。

 最近では黒ゴマなど「黒い食べ物」紅大人気ですが、子どもにはあまりおすすめできません。黒っばい食品=大人にはよくても、子どもはほどほどにと考えるといいでしょう。

 ただしポリフェノールは、米や野菜や果物など、それこそ植物出身の食品全般に含まれる物質なので、「絶対摂ってはダメ」とヒステリックになるのではなく、「なるべく摂りすぎないようにする」 のが賢明な態度です。

 大豆食品にしてもそう。大豆は「畑のお肉」とも称されるように、植物怪でありながらアミノ酸バランスの面でも栄養効率の面でも、肉類にも匹敵するほどの良質なタンパク質を含みます。その「恩恵」 にはあずかりながら、「害」はなるべく遠ざけるのが、どんな食材にも通ずる賢い食べ方なのです。子どもが食べるなら納豆より豆腐、でも納豆だって少し食べるくらいはOKというように、大らかに考えましょう。

 よほどの有害物質を含まない限り「ひとかけらでも口に入れたとたん、病気になる・死んでしまう・脳が育たなくなる」などという食品は、少なくとも自然界にはそうはありません。だから食べるものはなるべく自然の「生き物」から摂ったほうがいいのです。

 植物性にしろ、動物性にしろ、私たち人間がこの地球に同じく生きる「いのち」をいただきながら生きる以上、その植物には植物なりの、動物には動物なりの、事情や「いいところ・悪いところ」があって当たり前。そこを踏まえたうえで、なるべく子どもにとって「いい栄養」を、冷静に選ぶことが、親のつとめなのです。親たちが神経質になりすぎて「食べるのが大嫌いな子」 になってしまったら、元も子もありません。

カレーの食べすぎが注意欠陥・多動性障害の原因に?

3月 4th, 2009

 子どもに人気のメニューといえば、今も昔もカレーライス。昔からは考えられないほど口の肥えたグルメ時代の子どもにして、やはりカレーは好物の王道なのです。

 ただし、食べすぎはいけません。肉や野菜をたっぷり食べられて、ごほんも進むカレーは、確かに栄養バランスからしても悪くないのですが、問題はカレー粉、スパイスです。

 インドはもちろん、気温も湿度も高い亜熱帯地域などでは、スパイスは食欲を増進させるだけでなく、体内活動を活性化させ、食中毒を防ぐ、なくてはならないもの。薬として扱われるスパイスさえあります。日本でも「スパイスは代謝を上げてダイエットにいい」「カレーを食べるとボケない」などといわれ、実際、カレー粉に含まれる「サルチル酸」や「クルクミン」には「アルツハイマー病」を防止する効果が報告されています。

「サルチル酸」はポリフェノールの仲間にあたる「フェノール酸」の一種で、ポリフェノール同様「抗酸化作用」があります。また、アスピリンの合成材料に用いられるように「解熱」「鎮痛」「抗炎症作用」があり、近年ではアスピリンを常用している人にアルツハイマー病や大腸癌、動脈硬化などの心臓血管病が少ないことから、サルチル酸はこれらの予防にも効果があるとして、目下研究が進められています。

 サルチル酸はリンゴやキウイ、イチゴやブドウなどの果物、カリフラワーやブロッコリー、キュウリやナスなどの野菜、醤油やソース、酢にも含まれますが、とくにカレー粉には多いのです。果物や野菜に含まれるサルチル酸は100グラムあたり数ミリグラムですが、カレー粉は200ミリグラム以上。仮にアスピリンを常用して大腸癌を防ごうとしたとき、毎日飲まなければならない量が、カレー粉50グラムに含まれる計算になります。

 ですから大人はボケ防止、成人病防止のために、どんどんカレーを食べるべきだとする研究者もいるのですが、これが子どもの場合、サルチル酸にアレルギー反応を示す例が少なくないのです。アスピリンに対しても同様の症状を示す子どもがいますが、「職息」「頭痛」「じんましん」「手足の浮腫」「胃痛」、悪くすると「血圧低下」「意識不明」を引き起こす「アナフィラキシー」という状態に陥り、死に至ることすらあります。

 アメリカでは子ども用にサルチル酸を除いた食品が販売されていて、「注意欠陥・多動性障害」 の子どもにこれらの食品を与えると症状が改善したとの報告もあります。
「今日はカレーよ」というと子どもは大喜び。だからこそ、わが子の「カラダの反応」もよく観察しながら、カレーはあくまで「特別な日」 に楽しむようにしましょう。

大豆が男の子を女の子化させる?

1月 10th, 2009

 大豆に含まれるポリフェノールは、女性ホルモン 「エストロゲン」と構造が非常に似ていて、「豆腐を食べると肌がキレイになる」などと、女性誌ではよく特集が組まれます。 それこそ大豆ポリフェノールの一部は「植物性エストロゲン」とも呼ばれるほどで、豆腐は女性には格好の美肌食品。また、アメリカの研究者の間では、東洋の女性に乳がんが少ないのは豆腐をよく食べているからだとして豆腐の乳がん予防効果に注目する向きも多く、逆に近年では日本人の食の欧米化が乳がん発生率の増加を招いているともいわれます。

 その一方で、女性ホルモンにそれほど構造の似ている物質を、まだ小さな子どもがたくさん摂っていいものなのかと、危険怪を指摘する研究者もいます。個人差はもちろんあるものの、脳の機能にも男女差はあります。たとえば立体的・空間的な認知能力に関してはおおむね男性脳のほうが優れ、言語中枢に関しては女性脳のほうが発達していて、だからパイロットは男性に多く、通訳は女性に多いなどともいわれます。近年ではMRIやPETといったイメージング装置を使って生活脳の内部を映像化できるようになり、脳の 「男らしさと女らしさ」についても、より明確に解明されつつあります。

 まだ確証は得られていませんが、男性性と女性性がはっきり発現する前の子どもの脳に、エストロゲンとほぼ同じ構造を持つホルモン性物質が大量に与えられれば、その影響はいずれ脳の変化として現れてもおかしくないというのが、研究者の危供するところです。

 これはラットの実験ではありますが、生後から十日ほどの間、メスの赤ちゃんラットに男性ホルモンを投与し続けると、そのラットは大人になってからオスの行動パターンを示し、同じ時期にオスの赤ちゃんラットの精巣を除去すると成長後はメスの行動をとることがわかっています。ただし人間の場合は、母胎にいる間にほぼ性的な分化が確定するとされ、ラットとサ緒にはできないものの、少なくとも「第二次性徴」 (声変わりなど、十~十二歳ごろ) へ向けて性的にだんだん成熟していく時期の男児が、女性ホルモンに似た物質の影響をあまり強く受けるのは、やはり好ましいとはいえません。

 本来ホルモン性物質は体内でつくられるべきもので、食品やサプリメントで摂りすぎると、体内の分泌メカニズムが逆に損なわれる可能性があります。いくら美容にいいからといって豆腐ばかり食べていると、自前のエストロゲン分泌が疎かになりかねませんので、お母さん方はご注意を。子どもの場合はポリフェノールの弊害もあり、とくに男の子は大豆製品の摂りすぎには注意するに越したことはありません。

子どもにとって納豆はDNA修復作業を邪魔する要注意食品

12月 22nd, 2008

 大人にとってはカラダによく、しかし子どもにとってはあまりよくない食品はわりあいに多く、なかでもわかりやすいのが「納豆」です。

 納豆は、原料の「大豆」からして良質の植物性タンパク質を多く含み、たとえば朝食に言問添えるには理想的な食品のひとつ。豆腐ともども日本が誇る代表的健康食品です。

 ただ、これが子どもにとってとなると、実はいいことばかりともいえないのです。

 ネックとなるのが大豆に含まれる「ポリフェノール」。その含有量が、たとえば豆腐より多い納豆は、子どもにとっては有害とはいわないまでも、「要注意食品」となります。

 ポリフェノールは活性酸素を除去し、老化まで防止する、「抗酸化作用」が注目を集める健康ブームきっての超人気者。もとは植物の色や香りのもととなって虫を呼び寄せ、繁殖活動を促進したり、厳しい自然環境から強力な抗酸化能力で身を守るなど、植物が自分が生きるために備えた物質です。自然界には約八千種類ものポリフェノールがあります。

 人間はいわばその抗酸化能力の「おこぼれ」をいただいているわけですが、ポリフフェノールに関してはさらに、発ガン抑制、動脈硬化の予防、今話題のピロリ菌に対する殺菌作用なども報告されており、確かに大人には「カラダにいい」物質といえるでしょう。

 その一方で、あくまで「植物のため」に存在するポリフェノールには、鉄、亜鉛、カルシウムなどの「ミネラル類」 の吸収を抑制してしまう働きがあります。脳が出来上がっている大人はともかく、多くのミネラル分を必要とする脳の発達期にポリフェノールを摂りすぎると、その発育の妨げになる可能性があるのです。

 また、近年報告されているもので心配なのが白血病との関係です。人間のカラダには、地球に生きる限り常に活性酸素や紫外線によって傷つけられるDNAの傷の手当をする、数種類の「DNA修復酵素」が備わっています。とくに成長期にある子どもはDNAの増殖が盛んなぶん、修復工事も大忙しで、多くの修復酵素が必要です。その酵素のひとつ「トポイソメラーゼⅡ」の働きを大豆ポリフェノールが阻害することがわかったのです。

 つまり大豆ポリフェノールがこの酵素の働きをストップさせると、DNAの修復作業はうまく進まない。そして、幼ければ幼いほど傷つきやすい子どものDNAは手当されないまま放置される。その傷ついたDNAが白血病の発症につながるのではないかと懸念されているのです。小さな子どもには大豆は与えるべきではないと提唱する研究者もいるほどで、ある地方では豆乳を子どもに飲ませないよう運動しているグループもあるようです。

脳には大事なコレステロール

12月 18th, 2008

 子どもの脳の発育に、もうひとつ欠かせない脂質が「コレステロール」です。
 コレステロールは脳において、
①神経細胞の軸索に巻きついて、伝達効率を高める絶縁体「ミエリン鞘」の成分となる
②ストレスや血糖の調節に関係のある「糖質コルチコイド」や、ミネラルの代謝の調節
 に関与する「鉱質コルチコイド」、「男性ホルモン」や「女性ホルモン」、「ビタミン D」などの合成材料となる といった働きをしています。

 脳の神経細胞は、それぞれ「軸索」と呼ばれる突起を伸ばし、その先端から電気信号をやりとりして、情報を伝え合っています。この軸索に薄い膜のように巻きついて、信号が混線するのを防ぎ、情報伝達を迅速に行えるようにするのが神経膠細胞「ミエリン鞘」で、この絶縁体が機能するおかげで、ある部分の伝達速度は百倍以上にも高まるといいます。このミエリンを構成する成分が、コレステロールやDHAといった脂質なのです。

 また、ビタミンA、D、Eといった脂溶性ビタミンは、その名のとおり脂肪に溶けて体内に入りますが、コレステロールからは、脂肪を腸管から吸収する際に重要な働きをする「胆汁酸」が合成されます。この胆汁酸が不足すると、脂肪を小腸からうまく吸収できず、これらのビタミン類をせっかく摂っても、十分脳まで運ばれません。 
 魚類、とくにウナギに多く含まれるビタミンEには、脳内に発生した活性酸素に攻撃され、酸化した「n-3系」や「n16系」の必須脂肪酸をもとに戻す(還元する)働きがあります。いわば脳内の「活性酸素の掃除役」として、身を挺して働いてくれるのです。

 また、太陽を浴びたり、日に干した乾物などを食べることで摂取できるビタミンDには、脳の神経細胞に働きかけて、神経成長因子の分泌を促進する働きがあり、妊娠中の母親にビタミンDが極端に不足すると、胎児の脳の発育に影響が出るともいわれています。

 最近は「脂肪がつきにくい」などとうたった人工池が人気ですが、これにはコレステロールばかりでなく、DHAなども含まれていませんので、こうした人工油を常用していると、せっかくの栄養も脳に届きません。メタボを気にする親は人工池を使うとしても、子どもの食事にはごく普通の油、天然素材の油を使うようにしましょう。

 そしてこのことは、「大人のための栄養学」と「子どものための栄養学」は、常に分けて考えるべきだということを教えてくれる象徴的な一例ともいえます。

 めまぐるしい勢いで成長をとげる子どもの脳とカラダは、大人とは比べものにならない切実さで、より多くの、より良質な栄養を欲しています。だからこそ「子どものための栄養学」「子どもの脳を創るための栄養学」が求められていいはずなのですが、栄養学が医学としてではなく農芸化学の一分野として発展してきた日本では、そうした視点が育ってこなかったと、ある学者は指摘しています。実際、国立大の医学部で栄養学を扱っているのは東京大学や大阪大学などごくわずか。子どもの脳と大人の脳はどう違うのかという脳科学の知見が、これまで栄養学に取り入れられることもほとんどなかったといいます。

 しかし栄養に関しても大人と子どもでは事情が違い、「カラダのための栄養学」と「脳のための栄養学」にも大きな違いがあることが、最近の研究ではわかっています。

 脳が発達期にある十二歳までにどんな栄養をとるかは、のちの脳の成長を考えるうえで非常に重要です。私たち大人が「子どものための」「脳のための栄養学」という視点を持つだけでも、毎日の食卓に注ぐ目が少し変わってくるかもしれません。

サプリメントで摂ったDHAは脳細胞を老化させる

12月 16th, 2008

 アタマをよくしようといって、DHAやEPAをサプリメントで摂ると、実はかえって脳内環境を悪くしたり、脳細胞の老化を引き起こすことになりかねません。たとえばDHAは脂肪酸、つまり「酸」です。酸ということはDHAサプリメントを開封したとたん、空気中の酸素と結合して酸化がはじまります。この過酸化されたDHAが脳内に入ると「活性酸素」の発生源になり、脳はむしろ厄介者を抱えてしまうのです。

脳がブドウ糖をエネルギーに変える際には、酸素を必要としますが、その酸素の約2パーセントは活性酸素に変わって、脳内の脂質の、とくに「n-3系」や「n-6系」など大事な必須脂肪酸に悪さをしたり、いわば脳のお荷物になります。しかしそれはエネルギーを得るための「税金」のようなもの。脳はその活性酸素から身を守る防衛機構くらいはちゃんと備えている(スーパオキシド・ジスムターゼなどの酵素がそれにあたる)のですが、かといってサプリメントで摂った酸化したDHAまでは対応できないのです。

その点、魚を食べてDHAを摂る場合は、抗酸化作用のある「ビタミンE」なども一緒に摂ることになるので、活性酸素が過剰に増えることはありません。
 魚にしろ何にしろ、自然界に生きる動植物は、自らを酸化から守るためにビタミンEやポリフェノール類といった抗酸化物質を必ず備えているので、DHAにしても天然の食材からなら、活性酸素の心配をすることなく、安心して摂ることができるのです。ところがサプリメントは、良心的な製品ほどDHAだけを純粋に取り出していますから、ビタミンEなどの抗酸化物質が一切含まれない「純化されたDHA」を、しかも酸化された状態で摂取することになります。

 すると脳のなかでは活性酸素がどんどん発生して、さすがの防衛機構もお手上げ状態。
脳内環境は悪化していき、アタマはどんどん悪くなるし、脳の神経細胞の老化まで起こる……と、脳にいいどころか、悪いことだらけです。

 そもそも「血液・脳関門」はサプリメントで摂った物質をブロックしかねないので、どんなに「アタマにいい」物質も自然の食材を「食べて」摂るしかなく、DHAを摂るなら魚を食べて摂ること。基本的に自然のものを食べているかぎり、悪いことはありません。

 ただし、自然の食材を食べていても、脂質を摂るなかでは、このDHAサプリメントの酸化と同じような事態が起こる場合があります。それが揚げ物です。

 揚げ物は、200度近い高温で調理しますから、殺菌の面ではなかなか優れた調理法です。だからコンビニ弁当などではコロッケや唐揚げなど揚げ物のおかずがよく用いられるのでしょうが、実はこの高温調理こそが、脂質にとっては少々困った事態を生むのです。

 広く油は高温で処理されるほど酸素を吸います。たとえば魚のフライの場合、魚と揚げ油の間では脂質の交換が行われ、魚は揚げ油に含まれた酸素ごと、自分に取り込みます。そしてその揚げ油は温度が高いほど酸素を多く吸っている。要は酸化しているわけです。

 つまり高温でカラッと揚がった揚げ物ほど、その酸化した揚げ油に含まれる過酸化物質をより吸収することになり、それを食べた子どもは魚だけでなく、過酸化脂質まで一緒に食べることになる。とくに何度も使ってどす黒くなったような油は、過酸化脂質のかたまりのようなものですから、脳にもカラダにもいいわけがありません。家庭でキレイな油を使って、たまにする揚げ物くらいなら問題はありませんが、どんな油で揚げられているかわからない市販の揚げ物やコンビニ弁当ばかり食べさせている場合は注意が必要です。

 サフラワー油やゴマ油など、「n-6系必須脂肪酸」 の出発物質である「リノール酸」を含む油を使っても、この世に酸素があるかぎり酸化には勝てません。

 これらの「脳にいい抽」にしても、料理の仕方としては、なるべく常温から低温、たとえばドレッシングなどで摂ったほうが、その「よさ」 の恩恵にあずかることができます。

魚のDHAが脳を「やわらかく」する

12月 14th, 2008

最近はDHAの人気もあって「魚を食べるとアタマがよくなる」ともっぱらの評判です。しかし「脳のための栄養学」の視点からいえば、魚の脂に含まれるDHAやEPA、その出発物質であるα-リノレン酸といった「n-3系必須脂肪酸」が、「脳の細胞膜を
やわらかくする」「アタマをやわらかくする」というのが、正確なところです。

私たちの脳のなかでは「神経細胞(ニューロン)」の間を「神経伝達物質」が行き交い、電気信号の授受や化学反応を繰り広げることで、情報のやりとりをしています。たとえば子どもの情緒を安定させるなど、重要な働きをする神経伝達物質セロトニン
が、ある神経細胞に情報を抱えてやってきたとしましょう。セロトニンがめざす先は、その神経細胞の表面にある「セロトニン受容体」で、セロトニンが持ってきた情報はここで電気信号に変換されて、その神経細胞に伝達されます。

いわば自分を受け入れてくれる「器」なり「ポスト」なりを見つけて結合し、情報を手渡して初めて、セロトニンのメッセンジャーとしての仕事は無事完了となります。ところが、この受容体がなかなか顔を出してくれない場合があるのです。

 セロトニン受容体は各細胞の「細胞膜」に埋まっていて、その細胞膜の硬さによって頭を出したり引っ込んだりします。細胞膜の主成分は「リン脂質」で、このリン脂質がどんな脂肪酸で組成されているかによって細胞膜は硬くもやわらかくもなる。つまり受容体が埋まっている「土」の成分が、情報伝達の効率、つまり「流動性」を左右するのです。

 基本的に「飽和脂肪酸」が多いと、リン脂質内の組織がギッシリと緊密になるので膜は硬くなり、受容体は土のなかから顔を出しにくい。セロトニンがせっかく情報を手にやってきても、受け止める相手の顔が見えないわけです。

 逆に「不飽和脂肪酸」が多いと、脂肪酸の結合にすきまができ、やわらかい土になるので、受容体は膜の外に顔を出しやすく、セロトニンは情報を伝えやすくなるのです。

 つまり各神経細胞の膜の柔軟性を高め、情報伝達の効率を上げるには、不飽和脂肪酸を脳内により多くすることが必要で、なかでも必須脂肪酸の「n-3系」 のα-リノレン酸や「n-6系」 のリノール酸は、体内ではつくれないので食品から摂るしかないのです。

 ここではセロトニンを例に挙げましたが、その効果はドーパミンやノルアドレナリンなど、すべての神経伝達物質に共通です。脳内のありとあらゆる情報伝達をスムーズにし、学習効果や記憶力を高める魚類は、子どもの食事に積極的に取り入れたいものです。

脳にはオリーブオイルよりゴマ油がいい

12月 11th, 2008

 脳の乾燥重量の約50パーセントは「脂肪」。この脂肪も、脳の発達期に不足すると、重大な支障をきたすことにもなりかねない栄養素のひとつです。

 ちなみに、栄養学の世界では体内に存在する「脂質」 に関してはすべて脂肪といい、「脂肪酸」「中性脂肪」「コレステロール」などを広く示します。

 そして、脳の脂肪でとくに多いのが、「多価不飽和脂肪酸」と「コレステロール」で、子どもの脳を育むためにはこの二つの脂質の摂り方が、重要なカギを握ります。

 脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があり、前者は肉類など動物性の食品に、後者はサラダ油など植物性の食品に多いことが知られています。

 この不飽和脂肪酸は、さらに炭素の結合構造の特徴から、①オリーブオイルに含まれる「オレイン酸」などの「モノ不飽和脂肪酸」、②「多価不飽和脂肪酸」 の二つに分かれ、多価不飽和脂肪酸のなかでも、
●サフラワー油やゴマ油に含まれる「リノール酸」をはじめとする「n-6系必須脂肪
 酸」(「n-6」はエヌマイナスシックスと読む)
●魚に多い「α-リノレン酸」をはじめとする「n-3系必須脂肪酸」
 が、とりわけ脳の発育には欠かせません。
 イワシなどの魚の脂に含まれ、「頭がよくなる」と評判の「ドコサヘキサエン酸(DHA)」や「エイコサペンタエン酸(EPA)」は、このα-リノレン酸から合成されます。また、最近話題の「アラキドン酸」も、リノール酸を材料に体内で合成されます。

「必須」とあるように、脂肪酸にも体内で合成できるものとできないものがあり、人間にとっては「多価不飽和脂肪酸」が「必須脂肪酸」になります。たとえば、オリーブオイルに含まれる「モノ不飽和脂肪酸」のオレイン酸は体内でも合成できるのですが、「n-3系」のα-リノレン酸も「n-6系」のリノール酸も、それを含む食品を食べることでしか摂ることができません。

 つまり、「健康的な抽」として人気のオリーブオイルより、むしろサフラワー油やゴマ油が「脳にとって健康的な抽」「脳の発育に欠かせない必須な油」なのです。脳の発育に必要不可欠なのに「必須脂肪酸」である、この「n-3系」「n-6系」の上手な摂り方が「脳のための栄養学・脂質編」の第一のポイント。脂質も「質」が大事で、DHAやアラキドン酸にしても、なぜそれが脳にいいのか、正確に理解することがまずは大事です。

寝る前の一杯のホットミルクが「セロトニン」を増やす

12月 10th, 2008

 子どもの脳に不可欠な神経伝達物質・セロトニンの材料でありながら、輸送体から追い出されやすい必須アミノ酸・トリプトファンを、では、どう摂ればいいのでしょう。

 そのカギを振るのが、実は「糖」なのです。
 トリプトファンを含む食品にはたとえば牛乳がありますが、牛乳には「乳糖」も含まれます。すでに書いたように人間の体内ではブドウ糖や果糖、乳糖などの糖を摂ると、すい臓が刺激されて「インスリン」が分泌されます。

 このインスリンは、アミノ酸が筋肉をはじめとする「カラダをつくるための栄養」として取り込まれるのを促進する働きもしているのですが、実はトリプトファンだけは、このインスリンの影響を受けないのです。

 つまりタンパク質と糖を一緒に摂ると、「分岐鎖アミノ酸」のバリン、ロイシン、イソロイシンといったアミノ酸は、インスリンの掛け声につられて「カラダ用の栄養」として駆り出されていくのに対して、トリプトファンにだけはインスリンの声が届かないので、
「脳のための栄養」としてそのまま温存されます。

 その結果、「血液・脳関門」で「中性アミノ酸輸送体」に乗りこむ時点では、他のアミノ酸がカラダ用の栄養にまわされたことで量を減らしているぶん、血液中のトリプトファン濃度は相対的に高くなります。こうなればシメたもので、いつもは大きな顔をしている「多数派」の分岐鎖アミノ酸たちにも、本来は「少数派」であるはずのトリプトファンは十分対抗でき、今度は乗り物を追い出されなくても済むようになるのです。

 いわば、分岐鎖アミノ酸という威張りんほうのガキ大将たちの興味を「カラダづくり」に向けさせ、大人しいトリプトファンがちゃんと輸送体に乗れるようにしてくれるのが「糖」で、トリプトファンをより効率よく脳に取り込むことができるように働いてくれる、賢い味方。そして、この糖のおかげで無事運ばれてきたトリプトファンを原料にして、脳のなかでは神経伝達物質・セロトニンがつくられ、これが子どもの情緒を安定させ、安眠を促し、コミュニケーション能力すら向上させるのです。

 たとえば就寝前に、ちょっとお砂糖を入れたホットミルクを飲むと、大人でもなんとなく気持ちが安らいで、ぐっすり眠れそうな気分になるものですが、睡眠中の子どもの脳内で、セロトニン神経系をより活性化させるためにも、この一杯のミルクは有効なのです。