子どもの脳に、もっと甘いものを!

12 月 4th, 2008

 発達期の子どもの脳にどんなに糖が大切かは、すでにご紹介したとおりですが、一方で心配なのが「本当に砂糖や甘いものをたくさん食べさせて大丈夫なんだろうか」ということです。なにしろ砂糖というのは「肥る」「虫歯になる」と、何かと悪者扱いされる運命にあり、最近は「スタイル維持のために甘いものはガマン!」という小学生までいます。

 しかし人間の脳、とくに子どもの脳には、糖は必要不可欠で、「脳のための栄養学」の基本は糖の摂り方にこそあります。ところが、日本人は砂糖の摂りすぎに必要以上に神経質なくらいで、実は砂糖が足りないといっても過言ではない状況にあるのです。

 データによってかなりバラつきはあるものの、欧米諸国の成人一人あたりの砂糖消費量は一日平均40グラム~最大70グラムほど。かつては砂糖の摂りすぎと心臓血管病の関係が取り沙汰されるなど、諸悪の根源とされてきた砂糖を、近年は摂らなくなってこの数字です。これが日本人になると、厚生労働省発表の最新データでは、一日わずか約7.1グラムと、驚異的に少ないのです。

 その後、この砂糖の過剰摂取と心臓血管病の関連性に関しては、世界保健機構(WHO)が根拠がないとして結論づけています。ただその「万で、子どものころに甘いものを食べ過ぎると「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」になりやすいとの報告がアメリカの学会でなされるなど、砂糖をめぐっては今なお諸説入り乱れた状況にあります。

 しかし一日7.2グラム、多くて二〇グラムしか摂らない日本人に、まず問題はない。それどころか、脳が育ちぎかりにある子どもは、もっと甘いものを摂るべきなのです。

 もちろん虫歯については注意が必要です。ただ現在の摂取量ならそれほど神経質になる必要はなく、「食べたら歯みがき」を習慣化するなど、虫歯にならない注意で十分です。また、肥満に関しても、甘いものが悪というよりは、お菓子をのべつまくなし食べたりする生活習慣こそが、問題なのです。「おやつは、おやつの時間に食べる」習慣さえ身についていれば、おやつは食べていいのです。まして、よほどの肥満児でもないかぎり、小学生でダイエットなど、感心できません。この大事な成長期に脳までギスギスと痩せ細ってしまうと、取り返しはつきません。子どもが甘いものを好むのは、子どもの脳が甘いものを要求しているから。赤ちゃんが甘い母乳に必死で吸いつくように、発達期にある自分の脳には甘いものが必要だということを、子どもは本能的に知っているのかもしれません

ビスケットやプリンのおやつで、午後の脳に栄養補給

12 月 3rd, 2008

 朝の超・低血糖状態から子どもを救うのが朝ごほんなら、昼ごはんと夜ごはんのあいだの「もうひとつの空白」を救うのが、おやつです。

 子どもはだいたいが学校に上がるころになると、肝臓にグリコーゲンを「貯金」できるようになります。たとえば給食を12時に食べた子どもが、夕食を7時に食べるとすると、その間は実に7時間。この空白を埋めるためには、肝臓のグリコーゲンを分解してブドウ糖をつくり、何とか夕食まで凌ぐことになります。

 この肝臓のグリコーゲンの分解を促すのが、おやつに食べる「甘いもの」なのです。
 昼ごはんを食べることでいったん上昇した血糖値は、その後徐々に低下していきますが、そんなとき、クッキーでも飴でも、ちょこっとロにする甘いものが刺激となり、肝臓ではグリコーゲンの分解を促進するホルモン 「グルカゴン」が分泌されます。

 つまり甘さという「信号」を受け取ることで、グリコーゲンの分解はより活発になり、ブドウ糖をつくっては脳に送るので、ぼんやりしかけたアタマがまた冴えてくるのです。 実際、ラットの実験では、低血糖状態のラットにショ糖溶液を飲ませ、血液中のブドウ糖濃度、つまり「血糖値」の変化を調べたところ、ショ糖を摂取したことで増加するはずの血糖をはるかに上回る値が計測されました。

 つまりク甘い汁″を吸ったことによって、カラダのどこかでその汁に含まれる糖以上の糖がつくられたことになり、どこかといえば、もちろん肝臓です。 また、母乳に含まれる乳糖の量は、赤ちゃんが生後六カ月くらいになるころから徐々に減っていくので、6ヶ月以上の乳幼児の「食いしん坊な脳」にもおやつによる糖の補給は欠かせません。おやつの選び方としては、砂糖そのものより、できれば「タンパク質」も含むビスケットやプリンなどで糖を摂るようにしましょう。

 というのは、甘いものを食べると、「すい臓」からは「インスリン」が分泌されますが、糖尿病治療に用いられることでも知られるこのホルモンが、血糖値を逆に下げてしまぅ可能性があるのです。そのインスリンの分泌が、タンパク質と糖を一緒に摂るとうまくコントロールされ、糖分を摂ったのに低血糖などという事態は起きにくくなります。

 子どもには卵や牛乳を使った、できれば消化がよく、添加物などは含まれていないおやつを、よく選んで与えましょう。グリコーゲンの貯金ができるようになった6歳以上の子どもなら飴を舐めるだけでも血中のブドウ糖濃度が上がり、脳はしゃきっとします。

朝ごはんによる体温上昇が、脳細胞の活動をスムーズにする

12 月 1st, 2008

 朝ごはんはエネルギー不足に陥った朝の脳に、唯一のエネルギー源=ブドウ糖を供給するだけでなく、実は毎日の体内活動リズムを整えるうえでも大きな役割を担っていることが、最近の研究ではわかっています。

 また、朝ごはんを毎朝きちんと食べることによって、その日一日の食事摂取量が適当に調節され、メタポリック・シンドロームの予防ができることがわかってきています。

人間の体内時計はもともと一日が約24.5時間と、30分ほどズレています。これを地球用の24時間周期時計に修正してくれるのが、目から入って、「視床下部」の「視交叉上核」に送られる、「朝の光の刺激」です。

 人間の体内リズムのメカニズムをオーケストラにたとえれば、視交叉上核がいわば指揮者で、腸や肝臓や心臓などの”楽団員″は基本的にはその指示に従って、1日24時間の「日内リズム」というハーモニーを奏でています。ところがよくしたもので、この指揮者が多少サボってもハーモニーに大きな支障が出ないよう、実は楽団員は楽団員でそれぞれ自分なりの時計を持っていて、指揮者不在でも自分たちだけで「日内リズム交響曲」を演奏できるよう訓練されています。仮に朝日を浴びなくても、朝食を毎日きちんと決まった時間にとり、腸や肝臓が働き出すことで、カラダはその日一日のリズムを刻みはじめ、日々の食事量も自ずとコントロールされていくといいます。

 したがって体内時計遺伝子の研究者の間では「肝臓などの臓器にも体内時計はある」という言い方が一部にされ、マウスを使った実験では光の刺激より、むしろ給餌の刺激に、体内リズムは影響を受けやすいという結果も出ています。

 いわば視交叉上核が世界の標準時刻となるグリニッジ天文台で、腸や肝臓など「各国」にちらぼったローカル時計は、毎朝、各自の秒針を視交叉上核の指令で世界標準に合わせます。とはいえ、ときどき調針をサボったくらいでは時計が大きく狂うことはなく、むしろ毎日の食事の刺激によって、臓器に存在するローカル時計は一日一日のリズムを自ずから形成してもいます。

 つまりこの「摂食リズム」さえきちんとしていれば、光の刺激による体内リズムの「同調」が多少おろそかになっても、一日のペースは維持できるわけです。

 さらに、朝ごほんと夕ごはんのどちらが体内リズムの調整に寄与するかを調べた実験では、肝臓などの「体内時計遺伝子発現リズム」は、朝ごはんの刺激により影響を受けやすいことがわかっています。

 また、脳の活発な活動には、体温が適正レベルまで上昇していることが前提となります。そして、この体温上昇のカギを握るのも食事、とりわけ朝ごほんなのです。

 体温は、体内時計と脳の働きの関係を考えるうえで、もっともわかりやすい指標のひとつです。人間の体温は「概日リズム」を刻んで変動し、とくに明け方から朝にかけて体温が上昇に転じるかどうかが、寝覚めの快適さはもちろん、一日を通じた活動の効率に大きく関わっています。また、糖の代謝を促進するコルチゾールなど各種ホルモンも、体内時計によって分泌のサイクルがコントロールされています。

 体温は通常、朝4時ごろがもっとも低く、そこから上昇に転じて、午後4時ごろピークに達し、ふたたび下降に転じます。一日の変動の幅は0.5~1.0度と人によりますが、体温が十分に上がっていて軋めて、脳などの体内の細胞の働きは活発になります。

 たとえば各種スポーツ競技における世界記録は「午前よりも午後」に多く更新されているように、体温と細胞の活動効率は密接に関わっています。また、テストや試験の成績も、午前と午後ではおおむね午後のほうが正答率が高いとしたデータは枚挙にいとまがなく、脳の細胞もある程度体温が上がっていなければ、本来のようには働きません。

 最近では、お昼をすぎても体温が35度台の低体温の子どもが増え、これでは勉強にしろ運動にしろ、その子の能力が十分に発揮されるはずがありません。

 そうした子どもの脳やカラダのスムーズな活動の支えとなるのが、毎日決まった時間に摂る食事なのです。人間をはじめ動物においては体内時計が刻む「概日リズム」による体温変動に加えて、食事を摂ることでも、体内に熱が発生し、体温が上昇します。これを「熟効果」または「特異動的作用」といいます。

 たとえば朝ごはんで摂ったブドウ糖や脂質の4~5パーセント、タンパク質では実に約20パーセントが熱に変わり、体内時計に基づいた午後にかけての体温上昇を、さらに加速させます。つまり、午前は午後よりどうしても体温は低いのですが、朝ごはんをしっかり食べると、その熱効果で体温は上がり、午前中の不利を挽回することもできるのです。

 とくにタンパク質の熱効果は大きいので、朝ごほんにはお米やパンによるブドウ糖の摂取=脳のエネルギー補給はもちろん、卵や肉・魚類などタンパク質のおかずで体温を上げることも大事。試験や運動会など「特別な日は、おかずをあともう一品」というお母さんの心遣いには、栄養学的にもきちんと裏づけがあるのです。

 このように朝ごはんは、とかく夜更かし・朝寝坊になりがちな現代の子どもの脳やカラダにエネルギーを供給し、体内リズムを整え、体温を上げてくれる、ありがたい存在なのです。

脳のピンチを救う肝臓のバックアップシステム

11 月 30th, 2008

常にブドウ糖が供給されなければ脳細胞は死滅してしまうと書きましたが、だからといって一日中食事をしているわけにもいきません。一日24時間のうち、子どもには遊んだり、勉強したりする時間だって必要ですし、お風呂にも入れば、眠りもします。

 人間の脳やカラダが一日に必要とするブドウ糖は成人で120グラムといわれますが、全身の血液中に蓄えられるブドウ糖はたったの5グラム。この量では計算上、一時間しか持ちません。

 ところが人間のカラダというのは実によくできていて、食事がとれない間も糖を貯め、また、つくることさえできる、自前の「バックアップシステム」が備わっているのです。

 私たちがもっとも長い時間、食べることから遠ざけられるのが睡眠中です。寝ている間に脳がガソリン切れになると、人間のカラダというのは肝臓に「グリコーゲン」という形で蓄えられたブドウ糖を、いわば貯金を切り崩すようにして、使うことができるようになっているのです。

 ただし、肝臓にグリコーゲンとして蓄えられるブドウ糖は、大人でも一度の食事でせいぜい60グラムと、上限があります。
 たとえば前の晩、7時に夕食を食べて60グラムぎりぎりまで貯めこんでも、脳は夜寝ている間も、それこそ睡眠という「労働」をするために働いています。夜も働き者の脳は、夕食で貯めこんだその60グラムを、翌朝までにすっかり使い切ってしまうのです。

 つまり、朝起きたら、肝臓のグリコーゲンは空っぽ。だから朝ごほんは大事なのです。
 ちなみに、筋肉も肝臓と同じように、ブドウ糖からグリコーゲンをつくって蓄えています。しかし、そのあとの代謝のしかたが実は少々異なるのです。

 ここでは酵素の違いとだけ説明しておきますが、肝臓のグリコーゲンが分解されるとすぐまたブドウ糖に戻れるのに対して、筋肉でグリコーゲンが分解されると「乳酸」になります。実はこの乳酸も時間さえかければふたたびブドウ糖に変わることもできるのですが、脳のエネルギー源として働く即戦力としては、ほとんど期待できません。朝ごほん抜きで、血液中にも肝臓にも貯金がないまま向かった仕事で失敗しても、大人は自業自得ですが、わが子のテストの成績がどうこういう前に、毎朝きちんとブドウ糖を摂取させることを、親たちは心がけるべきなのです。

1日3食のうち二食は脳のための食事

11 月 29th, 2008

 人間のカラダは、たとえば脂肪ならいくらでも蓄えられるのに、脳に不可欠なブドウ糖にかぎって血中に五グラム、肝臓に60グラムと、貯蔵量に限界があって蓄えにくい。そして、いくらでも貯めこめる脂肪を唯一エネルギーとして使えないのが脳でもあります。

 たとえば登山中に遭難した人が、水だけで何日も生きていたというニュースを耳にすることがありますが、人間は水さえあれば、体重60キロの男性でだいたい15キロは蓄えている体内の脂肪を切り崩して、半年は何も食べなくても生きられるといいます。女性がピンチに強いといわれるのも、一般に男性よりも体質的に脂肪がつきやすいからです。

 そんなふうにカラダは脂肪をエネルギーにできるのに、脳だけは、貯蔵量に限界のあるブドウ糖しか使ってくれない、なかなかにワガママな臓器なのです。

 そうはいっても、ホントにいざというときは、全身の筋肉を構成する「タンパク質」を分解し、「アミノ酸」からブドウ糖を合成して、脳に送る「糖新生」という最終的なバックアップシステムもあることはあります。しかし、それこそ「身を削って脳が死なないよ
ぅにする」ようなもので、糖新生にもやはり限界はあります。ブドウ糖の定期的な補給を怠れば、脳の危機はいつなんどきにも訪れかねないのです。

 そして、成人で一日に120グラムのブドウ糖が脳に必要だとすれば、肝臓にグリコーゲンとして蓄えられるブドウ糖は二回の食事で最大60グラムですから、最低でも二日二回はごほんを食べて、肝臓に60×2=120グラムのブドウ糖を蓄えなければ、脳は働かないことになる。しかもブドウ糖は脳だけでなく、心臓や筋肉などカラダからも必要とされていますから、そのぶんまで補うとなると、三食はどうしても必要なのです。

 このように私たちが何気なくそうしている「一日三食」の正しさは、ブドウ糖代謝の面からも合理的に説明できます。
 一日の食事量が同じでも、二度にまとめて食べるより、三回に分けて食べるほうがよしとされるのも、肝臓のグリコーゲンに貯蔵リミットがあるから。ブドウ糖をどんなにたくさん摂っても、肝臓は二度の食事では60グラムしか蓄えられず、残りは、ムダになるだけならまだしも、体脂肪として蓄えられ、あとは肥満への道をまっしぐらです。

つまりブドウ糖の蓄積量が少ないから、しかも脳のブドウ糖消費量が多いから、一日三回ごはんを食べなければならない。そのうち「二食は脳のため」、「一食はカラダのため」に食べているという意識を持つことは、食青の観点からいっても非常に大事です。